肘の痛み、野球肘
練習をやりすぎて、肘が痛くなった! 将来の夢の大敵「野球肘」
「野球肘」とは?
ベースボールプレーヤーのみなさん、練習を真剣にやりすぎて、肘が痛くなっていませんか? そういう僕は毎日の施術で、肘が痛くて辛いです。これは肘の内側の筋肉が硬くなりすぎて、靭帯が炎症を起こしているのです。「内側上顆炎(ないそくじょうかえん)」という状態です。患者様の気持ちがよくわかりました。
「内側上顆炎(ないそくじょうかえん)」はよく「野球肘(やきゅうひじ)」とも呼ばれます。しかしテニスをしている人には「テニス肘」、ゴルフをしている人には「ゴルフ肘」などとも呼ばれているので、皆さんも一度は聞いたことがあるのではないでしょうか。ちなみに僕の場合は「マッサージ肘」です。
これはマッサージの練習をくりかえしおこなうことで、肘の内側から手首にかけての筋肉が疲労し、異常な緊張をおこしているのです。これをほっておくと、筋肉の肘にくっついている部分がひっぱられることで炎症をおこし、痛みはじめます。
マッサージをするときに痛くなるのはもちろんのこと、酷くなると肘を曲げたり伸ばしたりするだけで痛くなったり、さらに肘から手首にかけてが痺れだす場合もあります。
野球肘は肘から前腕内側にかけての筋肉の緊張と炎症をとることで、早期回復が見込めます。しかし治療せずに無理をしていると「剥離骨折(はくりこっせつ)」などに重症化してしまいます。
野球部のエースでピッチャー 15歳Aくんの場合
野球部のエースでピッチャーの15歳中学生Aくんの症例です。1ヶ月くらい前から肘に違和感を感じはじめたのですが、試合が近いので我慢して練習を続けていたとのこと。前日から違和感が痛みに変わり、「やばい! このままじゃ4週間後の試合に出れなくなる」と思って両親に相談し、ご家族みんなで来院されました。
患部を診たところ、変形や骨折などはありません。肘の内側部を触診したところ、「痛いっ」と顔をゆがめました。前腕の筋緊張は強く、肘の内側上顆部(じょうかぶ)にも激しい炎症がみられました。肘を曲げ伸ばしするだけで痛がっています。まさに野球肘です。僕とまったく同じ症状だったので、とても親近感を感じてしまいました。
エースピッチャーの彼は「どうしても4週間後の試合で投げたい!!」とのことだったので、惜しみなく電圧治療器をおすすめしました。当院の電圧治療器は、プロ野球選手も使用しているほどのツワモノで、通常の電圧器よりも1.5倍くらい痛みや筋緊張が早くとれるのです。ご両親にも効果の説明をし、さっそく施術をはじめました。
まずは干渉波治療器(かんしょうはちりょうき)で、肘の内側から手首にかけての前腕屈筋群(ぜんわんくっきんぐん)の異常筋緊張をとりのぞきます。その後、マッサージとストリッピングでさらに炎症と筋緊張をおさえます。最後に肘の負担を減らすため、テーピングを肘、手首、前腕の屈筋にはりました。
試合が近いから練習は休めないというので、ちょっと「ガーン!」ときましたが、まあそこは想定内です。ますます親近感を感じました。シンパシーというやつです。
痛かった肘が消滅し、試合で全力投球
練習を続けながら治療を試合に間に合わせるため、朝から学校のあいだは包帯を巻き、練習中はテーピングをすること、練習後はアイシングを10分、そして最初の1週間は毎日施術にくることなどを指導しました。
毎日しっかり練習後に通ってくれたので、1週間で肘の内顆部(ないかぶ)の圧痛はなくなりました。肘の屈伸もできるようになり、包帯をとることができました。しかし練習中のテーピングと練習後のアイシングは頑張ってもう1週間続けてもらいました。
あとは残すところ投げる瞬間の痛みだけです。やはり前腕の筋緊張が気になるので、ここからは筋肉に対して集中的に電圧治療器とマッサージを施していきました。こうして2週目は週4回通っていただき、痛みの80%はとることができました。
しかしまだ投球後の筋緊張が気になります。そこで3週目は3回、4週目は2回通っていただき、わずかに残る前腕の筋緊張をマッサージでほぐしました。こうして試合の日までにはほとんど気にせず全力投球ができるくらいまで回復しました。
試合当日は、痛みはもちろん、まったく違和感もなく投げることができました。勝敗は秘密にしておきますが、Aくんにもご両親にもとても喜んでいただき、僕たちは「間に合ってよかった」の言葉だけで大満足でした。
治したいと想っている患者様の熱意にはいつも感心させられますし、僕たちも燃えてきます。
野球肘の予防に、投球フォームをチェックする
Aくんの場合、我慢して投げ続けていたことが、施術期間を長引かせた原因のひとつです。「練習を休むとライバルにポジションを奪われてしまう」その気持ちはわかりますが、重症化して野球ができなくなってしまっては元も子もありません。
また、少年野球時代から中学野球、シニア、ボーイズへと、環境が変わるに従って、塁間の距離・ボールの大きさ・種類も変わります。どうしても筋力が弱い少年期は一所懸命投げようとして、投球フォームを崩してしまいがちになります。そんな状態で無理に投げていると、そのひずみが肘や肩関節にストレスを与えてしまいます。痛みが出はじめないうちに、ぜひ投球フォームをチェックすることをお勧めします。
野球肘になる前に、最初から痛みが出ない綺麗なフォームを身につけることが予防になり、将来の夢への近道かもしれませんね。